2018/04/27 ニュース
愛知県ほか、低炭素水素の供給網構築に着手
 愛知県は4月25日、県内の自治体や企業などと策定していた「あいち低炭素水素サプライチェーン2030年ビジョン」と、それを実現するためのロードマップを取りまとめたと発表した。このロードマップは、昨年10月に設置されたあいち低炭素水素サプライチェーン推進会議(座長・岡崎健東京工業大学特命教授)が取りまとめたもの。同推進会議には、▽豊田市、▽知多市、▽中部電力、▽東邦ガス、▽トヨタ自動車、▽豊田自動織機--が加わっている。このメンバーは、同ビジョンを実現するための最初の案件「知多市・豊田市再エネ利用低炭素水素プロジェクト」に同日着手した。
 
 同ビジョンは、2030年の愛知県内の低炭素水素利活用の姿を想定したもの。▽地域の低炭素水素サプライチェーンの持続的な発展、▽電力、運輸、熱・産業プロセスのあらゆる分野の低炭素化、▽広域的な水素流通量拡大による化石燃料依存からの脱却--が柱となっている。その第1弾となる低炭素水素プロジェクトは、県内で再生可能エネルギー(再エネ)由来の水素を製造、利用する地産地消の水素流通網を構築するもの。まず東邦ガスが県内の下水処理設備「知多市南部浄化センター」で、下水汚泥の処理過程で発生したバイオガスを原料に都市ガスを製造する。この都市ガスを、既存のガス導管網でトヨタ元町工場に輸送し、同工場のガス改質装置で都市ガスから低炭素水素を製造する。精製した水素は圧縮、貯蔵し、工場内で使用する豊田自動織機製の燃料電池(FC)フォークリフトの燃料に利用する。また、豊田市のごみ焼却発電設備「渡刈クリーンセンター」で発電した再エネ電力を、中部電力がトヨタに供給する。これで、バイオガス不足時に使用した都市ガス使用分のCO2排出量がオフセットされることになる。
 
 このスキームでは、県はプロジェクトの構成事業者の調整や低炭素水素製造計画の認定などを行う。知多市は知多市南部浄化センターのバイオガスを東邦ガスに供給し、豊田市は渡刈クリーンセンターからの再エネ電力を中部電力に供給する。中部電力は購入した再エネ電力をトヨタに供給し、東邦ガスは知多市から購入したバイオガス由来の都市ガスをトヨタに供給する。トヨタは、都市ガスを改質した水素をFCフォークリフトに充填して利用し、豊田自動織機はFCフォークリフトをトヨタに販売する。県は、水素原料の製造や輸送で既存のエネルギーインフラを利用するため、水素のコストを抑え、早期に事業化しうると期待している。県などは今後、未利用のバイオガス発掘・利用や、新規再エネとしてのバイオマス発電や風力発電の開発に注力する。さらに、FCフォークリフトの導入拡大、工場内の業務用燃料電池や小型水素発電なども先行して導入していくという。